雑記

Fateシリーズから学ぶ小説ストーリーを作る困難さ

クロスのジェットストリーム

小説というのは、現実ではない架空の物語です。

つまり空想して物事を語るので、どうしても現実世界だった起こり得ないような矛盾を生み出してしまうこともあります。

これがストーリーのような本筋と関係ないことだったらオッケーですけど、下手すると「あり得ない」で笑われてしまいます。

今回はFateシリーズというゲーム起源の小説を題材に、少し考えてみることにします。

(なかなか面白くて、読んでも違和感のない小説を書くというのは大変なのです)

Fateシリーズの設定

Fateシリーズとは、「聖杯」なるものを巡って7組のチームが勝ち抜き戦をすることになっています。

最後に残ったチームが聖杯の所有権を得て、勝利者となります。

チームはマスターと呼ばれる魔術師と、サーバントと呼称される英雄の魂(英霊)で編成されます。

1人のマスターが1つの英霊を召喚することにより、1チームを編成します。そして7チームで勝ち抜き戦をする訳です。

  • アーチャー (弓兵)
  • アサシン (暗殺者)
  • キャスター (魔術師)
  • セイバー (騎士)
  • バーサーカー (狂戦士)
  • ライダー (騎兵)
  • ランサー (槍兵)

以上の7つが英霊に付与される属性です。召喚したマスターには3つの令呪(れいじゅ)というものが付与されます。

「令呪をもって命ず…」と唱えることによって、英霊を空間跳躍させるようなことが実現できます。

つまり3回だけ、英霊を大幅にパワーアップさせることが出来る訳です。いつどうやって使うかが、最後に勝ち残る勝利者となる鍵になります。

これがFateシリーズの基本設定です。

最初に語られる戦い方

さて物語の最初の時に、マスター・リンが解説してくれるのですけど、互いのチームは出会った瞬間に戦闘開始するのだそうです。

チーム同士が協力することは「あり得ない」のだそうです。

私も厳しい勝ち残り戦だから、最初は納得して読み進めていました。

が、ある場面までやって来て、疑問が生じてしまいました。

その場面とは、マスター・リンがアーチャーとの契約を終了し、セイバーと契約したのです。

… えっ?

令呪というのは3回だけだと思っていました。しかしスマホや携帯電話のように、MNPというか契約切り替えが可能な訳です。

だからマスター・リンは、なんと令呪を4回以上も行使します。

おまけにマスター・リンは共闘があり得ないと言いながら、共闘します。

えーっと…

そうです。数学のゲーム理論で考えてみると、共闘は大いに「アリ」なのです。

全チームが拮抗している場合

まず各チームの実力が同じくらいだったとしましょう。そうすると2チームで組んで1チームと戦った方が、勝率は大幅アップします。

別に野球やバレーのように、2チームで対戦するというルールではありません。サイクリングのロードレースで有名なツール・ド・フランスのような「バトルロイヤル形式」です。

全チームが一斉にスタートし、最初にゴールした者が勝者となるのと同じです。だから強い相手を倒す時には、共闘が戦略として価値を持ちます。

そして相手が2チームであれば、こちらは3チームになった方が有利です。そうすると3チームと対戦する側は…

つまり7チームだから、事前に情報交換をして、4:3形式の戦いになれば一気に3チームを潰せます。そして残った4チームで、さらに分かれて戦えば良いのです。

つまりFateシリーズのルールに従うと、全チームが拮抗している場合には、戦う前の情報交換が鍵となります。

当然、協力するといって協力しなかったり、敵だといって協力するといった、裏切りなどもあるでしょう。つまりなかなか奥深い戦いになるという訳です。

共闘、大いに「アリ」です。

ダントツのチームがある時

さて英霊には、とんでもなく強い方々も存在します。

第四次でアーチャーをやったギルガメッシュ王とか、第五次のバーサーカーなんかは圧倒的な英霊です。

第五次のアーチャーは、バーサーカーのことを「あれ一騎で他の六騎を相手にできる」と高く評価しています。たしかに、とんでもなく強いです。

おまけにバーサーカーを召喚したマスター・イリヤも強いです。フルネームはイリヤスフィール・フォン・アインツベルン(Illyasviel von Einzbern)と、名前だけで圧倒されてしまいます。

このような時、あなたがマスターだったらば、どのような戦略を採用するでしょうか。

私だったら、他の6人のマスターと協力して、とりあえずイリヤ&バーサーカーチームを倒します。そうしないと、ゲーム・セットです。何しろ冷静で戦力分析に長けたアーチャーが、6チームと拮抗すると言っているのですから。

つまりこのように「強いチーム」が存在する時も、弱いチームは協力する訳です。この場合は裏切りなどは意味を持たないので、素直に協力して戦います。

一方でイリヤ&バーサーカーも油断してはいけません。こちらが採用する戦略は、早く他の1チームを潰すことです。

一時的に協力関係になっても、生き残るために「裏切り」が生じるリスクがあります。だから手っ取り早く、ドンドン倒していく訳です。

まさにバーサーカー(狂戦士)的な戦略だと言えるでしょうか。

そうなると相手をする他チームは早急に密接な連絡を取り、協力体制を整えます。つまりこの時にも情報共有や戦い方の相談を6チームでワイワイとやることになり、にぎやかで楽しく?物語が進むことになります。

こちらも共闘、大いに「アリ」です。

まとめ

Fateシリーズですが、結局のところは共闘がアチコチで生じています。

つまり「北斗の拳」のような1対1ではなくて、バトル・ロイヤルの様相を呈してします。

こうやって数学のゲーム理論を元に考えてみると、「なるほど」ということになります。

ちなみにゲーム理論は数学の一分野ですが、基本的な部分はムズカシイ数式を扱わなくて済みます。

Fateシリーズでなく、現実の世界もゲームとみなせる場合が多いです。

そういった訳で、「機会があったら、ぜひゲーム理論を勉強してみると面白いですよ」という話でした。

少なくとも小説家を目指すのであれば、ストーリーを考える上では「知っておいて損はない」です。

いつも参考にさせて頂いている人気作家の百田尚樹先生にしても、「面白い話を作るには分析力は必須」とコメントしています。

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:よつばせい