横浜ウナギ抗争の頂点に横浜野田岩が君臨する理由

横浜高島屋の野田岩

さて充実した鰻ライフを送るために食べ歩きをして来ましたが、ようやく全体像が見えてきました。

童話「青い鳥」ではありませんけれども、藤沢みのるは湘南住民にとってはソウルフードなのです。

そして横浜野田岩は頂点に君臨しているけれども、実は鰻好きが訪れる店ではないのです。

今回は高島屋の野田岩を訪問したので、そこらへんから横浜ウナギ事情を紹介させて頂くことにします。

(もちろん大繁盛しているだけのことはあって、悪い店じゃありません)

いざ横浜

今回は実家へ赴き、その帰りがけに横浜に立ち寄りました。

おかげで運転手(弟)付きなので、横浜野田岩の本店を目指してみることにしました。

… が、さっそく弟から呆れられる事態が発生しました。本店は日曜定休日なのです。

これは町田の八十八が2020年9月5日時点で金土日のみ営業しているのと対照的です。しかし少し考えて見ると、横浜野田岩の方が納得できます。

日曜日のデパートは大混雑です。野田岩は横浜高島屋に店舗を構えているだけでなく、地下の食品街でも「お持ち帰りウナギの蒲焼」を販売しています。

つまり職人さんもスタッフも、そちらの応援に回した方がサービス品質が維持できるという訳です。それに日曜はお休みした方が、健全というものです。

特に本店は接待などに向いています。しかし休日の接待というのは多くありません。だから日曜日はお休みするのは理に適っています。

(逆に金土日だけ営業するって、スタッフをどうするのでしょうね。他人事ながら心配です)

話が逸れましたが、日曜日が定休日なのだから仕方ありません。駐車場を考えるのも面倒なので、そのまま横浜高島屋店へ目標を変更しました。

で、高島屋5Fにある横浜野田岩に11時20分頃に到着したのですが、二十人くらいが店の前に立ったり座ったりしていました。相変わらずの人気です。

ただお店のスタッフに尋ねたら、驚いたことに待ち時間は30分程度とのことでした。そこで八十八NEWoman店を目指すことはなく、大人しく待つことにしました。

鰻丼のカラクリ

驚いたことに、本当に35分待ちで店内へ入ることが出来ました。

美味しんぼ第三巻によると、「焼き立ての鰻をホカホカのご飯で食べる」のが理想だそうです。さっそく試してみようと、「中入れ丼」を注文します。

ふと見ると、私のお茶が遥か遠くに置かれています。

横浜野田岩の玉露

小ぶりの湯呑み茶わんに、ヌルくて甘いお茶… つまり玉露が入っていました。

店内は仲居さんたちが、忙しそうに動き回っています。それほど忙しいから、湯呑みの位置修正まで手が回らないのでしょう。賑やかです。

(とは言え、お代わりはすぐに注いで頂けました。気持ち良いサービス品質です)

で、町田の双葉と同じような山椒ケースを撮影などしていたら、あっという間に中入れ丼が到着しました。

横浜野田岩の鰻丼

… 実は出来上がり時間を予告されていなかったので、こっそりと時間を測定していました。なんと10分です。

町田の双葉の5分には及びませんが、蒸しが少ない八十八でさえ「25分お待ちください」です。どうやら蒸しまで済ませていて、それを焼いているのでしょう。そうでなければ10分は難しいです。

(美味しんぼのように、焼いた鰻の蒲焼を暖め直しているとか、蒸し直しているとは思いたくないです)

タレは付いて来ません。「ご希望でしたら、お呼び立てください」とのことです。

野田岩の中入れ丼

ドンブリはウドンなどと同じ標準サイズであり、ウナギは小さめです。中にもウナギの蒲焼が入っているので、これが妥当な大きさなのでしょうか。

(ご飯のスペースが目立つので、ついついタレを頼みたくなってしまいますな)

そして食べ始めて驚きました。

横浜高島屋の地下街で、「お持ち帰りウナギの蒲焼」を調達したことがあります。しかしコチラのウナギの蒲焼は、見事なまでに脂が落とされています。

逆にしっかりと「蒸し」が入っており、ウナギそのものは「ふっくら」としています。

そして醤油が強めなもののタレ自体は控えめなアッサリ系なので、「魚の味」を味わうことが出来ます。「お持ち帰り」にも共通するのですが、旨味が弱くてサッパリとした味に仕上がっています。

これが横浜野田岩のウナギの蒲焼です。白身魚みたいな感じに近いです。

物足りないと感じる人も多いでしょう。少なくとも私の奥さんや子供には、あまり好まれそうにありません。

逆に母親には、大いに好まれそうです。年配者向けウナギというところでしょうか。

だからウナギもご飯もホカホカなんですけど、「美味しんぼ」の世界からはかけ離れています。だから「お持ち帰りウナギの蒲焼」でも、自宅で奥様から「なんとか合格点なウナギの蒲焼」を実現できたのでしょう。

(ただしタレは好みでないと言われました)

そうそう、皮は柔らかいです。驚いたことに昨日は「しま村」でも皮は意識しましたが、今回の横浜野田岩では存在を失念していました。それくらい柔らかくなっていたということでしょう。

横浜野田岩の鰻丼

ご覧の通りで、皮の存在が分かりません。とても柔らかくて「ふわふわ」な身なのですが、皮も恐ろしく柔らかいということです。

まとめると、「ふわふわだけれども脂分や水分のないウナギの蒲焼」&「タレ控えめ」です。ウナギ本来の味は楽しめますが、このウナギは人によって大幅に評価が異なるでしょう。

ちなみに私の場合は、「こういう加工ウナギも悪くないけど、そうするとウナギの量が少ない」と思いながら食べました。

つまり追加用のタレは頼まなかったということです。タレの甘さや醤油に舌が慣れると、ウナギ本来の微妙な味が消えて、「ただの白身魚」と化してしまいます。

横浜野田岩のタレご飯

ちなみに最終的に、残ったご飯とタレは、ちょうどバランスが取れる配分になっていました。さすがは横浜野田岩の職人芸といったところでしょうか。

それからご覧の通りで、本当に脂分が見当たりません。「お持ち帰りのウナギの蒲焼」には脂分が包み紙にベッタリと付いていたので、同じ横浜野田岩でも別物だと考えるのが良さそうです。

なお食事と同時に、ほうじ茶が提供されました。ここら辺の繊細さは、幕末から続く伝統芸というところでしょうか。さすがは「麻布本店の大将の弟さんのお店」といったところです。

まとめ

以上が横浜野田岩のウナギの蒲焼の正体です。

町田の小田急百貨店にある双葉と良く似ています。「短時間で多くの客を得意客をさばいて場所代を補う」というアプローチです。

なんか若年層も多くて「君たち、こんな食事を出来るほど稼いでいるのか」と確認したいところでしたが、それでも年輩の固定客が多かったです。だから店の前で20人待ちという状況だったのでしょう。

私は冷凍ウナギも喜んで食べているので「アリ」でしたが、果たして正統的な鰻ファンがどこまで受け入れるかは微妙な気がします。実際、私のような「見るからに貧乏な鰻ファン」は皆無でした。

ただし飲食店において、多数の固定客(それも富裕層)を抱えているというのは強いです。だから昨今のご時世でも、そして八十八のような新興店(昔とは別コンセプトの店)が参入しても、横浜駅近辺の有力ウナギ店という立場は揺るぎません。

これと対極的なのが、まさに普通に捌いて焼きたての三河一色産ウナギの蒲焼を売る「藤沢みのる」です。こちらもタレが薄めで、「本当のウナギの味」を感じることが出来ます。

ちなみにどちらも備長炭の炭火焼です。それだけに違いが際立ちます。

(申し訳ないですが、やはり脂を落として作り置きをする横浜野田岩のウナギは、「素の魚の味」とは違います)

ともかく、横浜野田岩は今後も安泰でしょう。ただし私が行きつけの鰻屋とするかは、微妙なところです。

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:よつばせい